2023年03月
能力と戦略
「カタバミ」と言えば、くっきりとしたハート型フォルムの葉っぱを持つ( 一部園芸用の品種を除く )多年草で、頑強な繁殖力を持ち、根の除去が非常に困難である為に「雑草」として扱われている。
日本の固有種ではないにしても「史前帰化植物」に分類される程に古くから生息している植物で「枕草子」にも「織物としての文様」に関する記述がある。何処にでも身近にあり「根」「種」「鱗茎」「匍匐枝」等の多種多彩な繁殖方法を併せ持つ為に一度根付くと駆除が難しく、その性質に肖り「子孫繁栄」「家運隆盛」の象徴として、特に武家の家紋として「百種類を越えるデザイン」に用いられ愛されてきた経歴がある。
少なくとも千三百年近く歴史の中で在来種として存在してきた「カタバミ」が、外来種の「カタバミ」に取って代わられている様にも感じられる。「 頑強な繁殖力はそのまま健在と思われるのに、何故か? 」私の独断ではあるが、在来種は今の感覚では「 目立たない地味な存在 」になっている為と考える。
在来種 ①~④ も進化を遂げてはいるが飽く迄、能力の増強に留まっている様に感じられる。
①在来種「カタバミ(片喰)」 → 頑強な繁殖力
②在来種「タチカタバミ(立片喰)」→ ① の頑強な繁殖力+ 高さの優位性付与
③在来種「アカカタバミ(赤片喰)」→ ①+ 環境への耐性力向上+「匍匐枝」による繁殖力増強
なお ④「ムラサキカタバミ(紫片喰)」は「 全ての能力に於いて、在来種よりも優勢 」である様に感じる。
④外来種「ムラサキカタバミ(紫片喰)」→ 高さの優位性+ 大きな葉の密生による他植物の駆逐
在来種は草丈が ①「カタバミ(片喰)」,③「アカカタバミ(赤片喰)」が約 5~10 cm、②「タチカタバミ(立片喰)」は約 10~20 cm になるが、④「ムラサキカタバミ(紫片喰)」は 30 cm 程になる。
更に特徴的な形を持つ葉っぱに於いても、在来種は大きくても 2 cm 程度でそれほど目立つ事はないが、④ は 5 cm 近くまで大きくなり、同じ場所に他植物が育つ事を阻害して最終的には駆逐してしまう程である。
ここでは ④「ムラサキカタバミ(紫片喰)」を外来種として扱う。この品種は江戸末期(十九世紀頃)に、最後の ⑤「オオキバナカタバミ(大黄花片喰)」はそれから百年程度経過した明治中期以降に観賞用植物として日本に観賞用植物として導入されて野生化したものであり。
物流が活発になる江戸末期を起点として、江戸末期以前に伝来した植物を「旧帰化植物」として在来種に、江戸末期以降に伝来した場合は「新帰化植物」として外来種に分類される。
今までに挙げた ①~③ は「史前帰化植物」として、一般的にも在来種として扱われる。
外来種は在来種より繁殖能力に優位性があり、その上で能力以外の戦略面に於いて勝っている様に感じる。
⑤外来種「オオキバナカタバミ(大黄花片喰)」→ 高さの優位性+ 葉と花の広範囲密生で他植物を駆逐+ 葉の育成と開花時期の先取り
草丈は④「ムラサキカタバミ(紫片喰)」が 30 cm 程なのに対し、⑤「オオキバナカタバミ(大黄花片喰)」はその倍に当たる約 50 cm、周囲に障害物がある場合はそれ以上に伸びる事もある。
花の大きさは ①~④ と比較して数倍大きく、更に一つの花茎に付く蕾の数も数倍多く群生する為に密集度が凄まじい。
この様に植物としての能力の優位性を以てして、他の競争相手よりも有利に繁殖できる状態を、空間的に作りだしている。
また、ハート型の葉っぱも ④ 程には大きくはならないが、静岡県浜松市に於いて彼岸花の開花が終わる九月の中旬頃から木陰等、日光の当り難い部分の地面を埋め尽くす様に一気に繁殖する。④ は飽く迄も「個」に近いイメージだが、⑤ は圧倒的な「群」でとなって存在する。
観察した限りでは、葉は繁殖した後に花茎を伸ばして巻紙型の蕾を付け、その状態のまま越冬して他植物の開花に先んじて一気に盛花期を迎える。
これは温暖な浜松市の気候だからこそできる方法かもしれないが、この様に他の競争相手よりも圧倒的に有利な繁殖状態を時間差で作り出し、植物としての能力の優位性と併せて、結果的に爆発的と言っていい程の繁殖を成している様に感じられる。
その他にも確実に証明する事はできないが、人の目の感じ方に働きかけて駆除されない戦略をとっている可能性も考えられる。
( ②「タチカタバミ(立片喰)」は不明だが )①「カタバミ(片喰)」,③「アカカタバミ(赤片喰)」は人目に付かずに邪魔と感じられない形状を採用し、逆に ④「ムラサキカタバミ(紫片喰)」,⑤「オオキバナカタバミ(大黄花片喰)」は逆に、人目に好ましく感じる目立つ形状を選択している様にも感じる。
特に④「ムラサキカタバミ(紫片喰)」は自分の記憶に於いても強い印象を残しているが、「 花びらの色がピンク色ではなく、①~③ の様な濃黄色だった場合 」は、果たしてこの様な好印象を残す事ができたのか?と疑問に思う事がある。
江戸末期~明治の「近代への転換期」に日本人の好みも、従来種が体現する「 古式懐かしい,慎ましい,謙虚 」と言った消極性は主流から脇に追いやられる事となり、結果的にはその変化に沿った形状と戦略性を持った外来種が目に見える形で、生き残るどころか圧倒的な成育圏を持つ事になったのではないか、と考察する。
それとは逆にすっかり影の薄くなった在来種ではあるが、目立ちはしないものの所々でしっかりと生育しているのを見かける為、「 能力の優劣よりも、見た目で負けるのは印象的なマイナス面が大きい 」と納得させられた今日この頃である。
投稿者:サービス部
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2023年03月01日 | このページのURL | コメント (0) | トラックバック (0) |